MUSUPERUHEIMU

MUSUPERUHEIMU

第47話

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 「それで?エレベーターに動きは?」

端末でエレベーターの動きを監視しているチェルシ-の
椅子の頭に肘を突いてアタシは尋ねる

 「今のところ地下に下りたままです」

 「シュトゥルムは?」

 「今エレベーターの前に着いたようです」

端末のモニターに目を向けるとエレベーターゲート前に
立つ黒服のシュトゥルムが映っていた

 「あの女…随分とあそこに執着しているようだねぇ」

 「確かに」

アタシの言葉にチェルシ-は頷くがそこにゾークが一言

 「彼女は…どういう人物なのだ?」

という質問をアタシに投げ掛けてきた

 「どんな意味で聞いてるんだい?」

 「私の見たところ彼女は…カタギでは無さそうだと思ってな」

 「そりゃこんな事してりゃカタギという事はない思うけど?」

 「いや、そういう意味ではなく…」

 「悪い悪い冗談さね…解かってるさどういう意味の質問かは」

 「…おそらく彼女は無意識の内にに足音を殺し
  他人との距離も己に有利な間合を取っている」

 「アタシもちょっとした情報しかないけどそれでもいいなら」

 「無理には聞かないが?」

 「あー違う違うあの女はうちの社内でもなんか秘密多いのさ」

アタシはゾークの方を向き変な所を押さないように端末に腰掛ける

 「うちの社の情報部の知り合いにちょっと聞いたんだけど
  どうやら聖王庁のそれも暗部に居たらしいんだよね」

 「…暗部…死告天使か?」

 「まぁその辺じゃないかというくらいさ勿論確証は無しだよ?
  それで任務でポカして破門になったと聞いたんだけどね」

 「解せんな…」

ゾークはあごに手を当て難しい顔をする

 「でしょ?殺し屋みたいな奴が簡単に破門されて
  簡単に企業に就職するなんてちょっとありえないしね」

 『へぇ…面白い話してるわね』

アタシ達がそんな会話をしていると
外部回線モニターの中の社長少女がそう呟いた

 「まだ居たんですか社長?暇人ですね」

・・・ピキッ・・・

辛辣な秘書の台詞に一瞬、モニターにヒビが入った錯覚を感じた

 『…相変らず上司に随分な言い様ねチェシャ?』

 「無駄に書類を溜め込んで一気に消化しようと
  内容もろくに確かめずに判を押すのはいつもの事なので」

 『フォローするのが秘書の役目なんじゃない?』

 「申し訳ありません無能な上司の尻拭いは不得手でして」

 『無能な上司って誰の事かしらね~?』

 「己を知らないというのは哀れだと思いませんかミスオカユ?」

 「コラッ!サラっとアタシを巻き込むな!」

 『チェシャ…今度のボーナス楽しみにしてなさいよ…』

 「いえ私は従来のままで満足してますので
  UPしてくださらなくても結構です」

 (…よくクビにならないもんだね)

 『…まぁいいわ…それよりお二人さんさっきの話の事で
  面白い話を追加してあげましょうか?』

 「面白い話?」

 『ええ、もしシュトゥルム女史が暗部の人間だったとしての
  話だけどね、その場合トワイライトなら入社する事は可能よ』

 「?どうやって?」

 『貴女のボス…つまりルシファーブラック総帥はね一度
  聖王庁の枢機卿の地位まで登りかけたからよ』

 「!?」

枢機卿…12人の次期聖王候補であり…聖王庁最高幹部…!

 「トワイライトは聖王庁の資金源という事か?」

 『ううんそう思うのは仕方ないけどそれは違うの』

ゾークの言葉をアリス社長は否定した

 『資金源になってるマフィアみたいな組織は他にもあるしね』

黒い金を宗教組織がクリーンしているというのはよく聞く話だ

 「それじゃあ天下り先とか?」

 『うーんそうね喜んで行く訳じゃないでしょうけど
  総帥は断らないと思うわよ』

 「………」

なるほどそれならあの女が暗部だったという話も
信憑性が出てくるわけだ…

 「ミスオカユ」

考え込んでいたアタシに突然チェルシ-が話し掛けてきた

 「ん?なんだい?」

 「エレベーターが上がって来ました」

 「!」

アタシはエレベーターゲートフロアを映すモニターに目を向けた

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・・・ウィーン・・・・・・・・ゴォウン・・・・ガシャン!

エレベーターが到着した音がゲートフロアに響く


 「………」

・・・パチン・・・

シュトゥルムは指貫された黒いグローブ…
彼女専用のナックル『黒魂』(ブラックソウル)に拳を収めた

・・・シュー・・・

エレベーターの扉が上下に分かれ開いていくが
それが半分も開ききらないうちに…

・・・ガゴォォン・・・!!

 「!?」

・・・ズバァッ!!

エレベーター内から放たれた三つの斬撃が開きかけた扉ごと
シュトゥルムの体を斬り裂いた…様に見えたがそこにあるのは
斬り裂かれた彼女の法衣だけだった

・・・ビュッ・・・!

斬撃を放ったと思われる人物に向かって黒い羽根が飛ぶ

・・・バシュゥ・・・!

その羽根を一本の剣が受け止めて弾けた

 「…いきなりとはやってくれますね」

声の方を向くと法衣を脱ぎ身軽な格好をになったシュトゥルムが
立っていてその握った両拳の指の間には沢山の黒い羽根が挟まれていた

 「まぁいいでしょう…適当に痛めつけて
  地下の話でも聞かせて貰いましょうか?」

そう言ったシュトゥルムの瞳が妖しく煌めいた


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